大阪大学では、これまで生命科学研究分野において世界的にみても先進的な研究成果をあげる研究者を養成・輩出してきました。このような成果の中から、例えば、岸本忠三先生(元大阪大学総長)と平野俊夫先生(現大阪大学総長)による「液性因子インターロイキン6の発見」という基礎研究の成果が、関節リウマチなどの免疫疾患へのインターロイキン6の作用をブロックする抗体医薬の開発につながっています。しかしながら、まだ制御することのできない疾患がまだまだ多く残されており、多くの患者がこれら難治性疾患に苦しんでいます。生命科学研究の究極のゴールの一つである疾患の制御が、先進的研究成果をあげる研究者を多数輩出してきているにも関わらず、達成できないのはなぜでしょうか?
私たちはこの原因の一つが、各生命科学研究の分野が専門化しすぎて、専門化した各生命科学分野では一流の成果であっても、それが異分野の領域に応用できず、生体統御システムを俯瞰的に捉え研究を進める研究者が養成できず、生体の統御システムの破綻として発症する疾患を理解できず、さらにそれに対する治療応用、医療技術開発が実現できないからであると考えています。 そこで、リーディングプログラム「生体統御ネットワーク医学教育プログラム」では、大阪大学で生命科学に関する先進的研究成果をあげている研究者を6研究科(医学系研究科、薬学研究科、工学研究科、生命機能研究科、理学研究科、歯学研究科)から結集し、専門化しすぎた各生命科学研究分野(例えば、免疫学、再生医学、神経科学など)の壁を取り払い、さらには各研究科間の大きな壁までをも取り払い、生命現象を俯瞰的に捉えることのできる研究者を養成するプログラムを構築しました。これだけにとどまらず、私たちの教育理念に共感してくれている6企業の研究者がプログラム担当者として参画するとともに、講義、企業インターンシップなどを通じて教育に携わってくれる企業も複数あります。これらの企業の参画により、大学でのすばらしい研究成果を実際に医薬品や医療機器の開発などの社会応用に橋渡しするリーダー的人材の輩出が実現できると考えています。
また本プログラムには海外からの留学生を多く受け入れます。そして、英語での教育を提供します。優秀な海外留学生とともに皆さんが切磋琢磨し、お互いがお互いを高め合う環境を、大阪大学が誇る生命科学研究者が一致団結して提供します。
生命現象に興味があり、さらには疾患治療を実現することを夢見る、熱意のある学生は、ぜひ本プログラムで生命現象を俯瞰的に捉えることのできる生命科学研究者をめざしませんか。将来、いくつもの難治性疾患の克服を可能にする研究者となってくれることを大いに期待しています。