Meet the Leaders 13 (Assoc. Prof. Naoki Miyano)
Meet the Leaders
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2016.7.21 |
13th Meet the Leaders 報告書
京都大学学際融合教育研究推進センター 宮野公樹准教授をお招きして実施した今回のMeet the Leadersは、前半90分の講演、後半60分のランチタイムディスカッション(希望者)という2部構成で行った。また、周知した他リーディングプログラムより、ヒューマンウェアイノベーションプログラム、インタラクティブ物質科学カデットプログラムからも参加してもらうことができた。
PowerPointを"卒業"して(PowerPointを使用したプレゼンの本を執筆されているにも拘らず)聴衆と良い時間を共有するために、音楽を流しながらの対話形式でセミナーが実施された。この一事から先生の為人を伺い知ることができる。ただ、合理主義だけではなく根底に哲学思想があるために私たちが普段接する人物とは異なった印象を受けた。
私は哲学が何なのかを漏れなく説明することはできないが、先生の講演の中での言葉をお借りして、わかりやすく表現するならば、「問いに対し、問いで返す」という思考だと思う。これは長期的視点で学問を追究する大学が、比較的近い視点で利益を追究する企業とは最も異なる強みである。一方で、我が国の大学の位置付けが劇的に変容しており、目先の成果を求めるあまり、大学の本来の特性であった「問う機能」が失われつつあると先生は指摘されていた。カリキュラムとして(むしろカリキュラムを定めすぎた弊害として)学生の自身または他者に対する「問い」の時間、機会が減っているだけでなく、大学の運営層だけではなく、大学政策を打ち出す文部科学省においても、「問い」をできていないことを、双方に籍をおいた経験から実感しているというお話があった。そこで立ち返るべきは大学の原理としての哲学であるという。
講演の中では、本居宣長、荻生徂徠、中江藤樹、トーマス・クーン、ソクラテス、孔子、老子などの思想が引用された。単一の学問が発展し細分化され枝葉を分かれてバラバラになってしまった今こそ、その原点にあった哲学思想に触れることが、博士課程を修了しPh.D.(Dr. of Philosophy)として社会に出て行く私たちに必要なことであるのは間違いないと思う。先生の提案する、博士号取得者が社会へ出てどんな仕事に就くにしても、「哲学的な◯◯であれ」ということは重要なポイントだった。
また、異分野融合ということにも独自の持論を展開していただいた。全ての学問(事象)に異分野を合わせていないものはないため、例えば互いの研究を発表する機会を設けたところで異分野融合は成し得ない。先生が実践経験から考える異分野融合は、ある「問い」に対してそれぞれの専攻研究分野で培った思考フレームを共有して解を求め続けることであり、これは私たちがこれまで行ってきた活動を見直すきっかけになる提案だと思う。
勝手ながら本講演のTake home messageを決めるとすれば、「問い続け、考え続けよ」だと感じた。
学生の本分を常に考えながら行動していきたいと思う。
文章:一期生 金光 慶高(主催)