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第4回全国博士課程教育リーディングプログラム学生会議参加報告

 Post-event Reports
2016.7.14  

IPBS履修生8名(4期生1名、5期生7名)が、第4回全国博士課程教育リーディングプログラム学生会議に参加しました。
以下、参加学生からのレポートをご紹介いたします。

  1. 概説 & 会議紹介 詳しくはこちら (公式HP) >>
  2. レクチャーレポート 詳しくはこちら (公式HP) >>
  3. ワークショップレポート 詳しくはこちら (公式HP) >>
  4. 成果&展望
  5. 図解 詳しくはこちら (公式HP) >>

1. 概説 & 会議紹介

概説:
平成23年度から開始された文部科学省の「博士課程教育リーディングプログラム」は、専門分野の枠を超え、優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダー人材の育成を目的としています。「全国博士課程教育リーディングプログラム学生会議」は、全国30大学62プログラムで実施されている「博士課程教育リーディングプログラム」履修生が、自主的に運営し、毎年開催しています。

会議紹介:
第4回目となる今回の学生会議は、平成28年7月8日(金)から7月10日(日)にかけて幕張メッセ・国際会議場にて、千葉大学「免疫システム調節治療学推進リーダー養成プログラム」、筑波大学「ヒューマンバイオイオロジー学位プログラム」、同「エンパワーメント情報学プログラム」の3プログラムの共催という形で開催され、過去最多の参加者数である約250名が参加し、参加プログラム数は48プログラム(62プログラム中、約80%)と過去最多を記録しました。
『リーダーの資質を考える』をテーマに、講演や創出型ワークショップを通して、"Innovation"を創出する力を鍛える貴重な機会となりました。昨年度の学生会議(北海道)で挙げられた『他者とつながり、課題を自ら見つけ出し、解決のアイディアを創出する』という『アイディア創出型ワークショップ』を踏まえ、『Funnovation』と銘打ち、一見すると実用性に乏しい一方で、「それ、面白い!=It's funny !」 という思考を発想のスタートに置くことを提案され、日常の思考から脱却し、非日常な思考による発想の転換を促そうと試みました。その上で、次はそうして生まれたFunnyなアイディアをどのようにして社会へのニーズにマッチさせた製品にまで昇華させられるかを目指し、このFun/Funnyな発想から生み出されるInnovation、すなわち"Funnovation"が提案され、ワークショップでは、この"Funnovation"を創出し、それを生み出した成功者として「Forbes JAPAN」に取材された形式で記事を作成しました。
産学官からのアドバイザーを多数交え、専門も国籍も異なる大学院生が互いの強みを活かしながら、3日間にわたって白熱した議論を行いました。


2. レクチャーレポート

レクチャー1(アステラス製薬株式会社 畑中義彦代表取締役社長 CEO)
講演テーマ:次世代への責任と思い              
報告者:濱川 菜桜

近年、新テクノロジーがめまぐるしく進歩を遂げる一方で、食糧問題、環境問題、格差などのグローバルな問題に対して適切な対応をすることが非常に重要である。社会をリードしていくうえで、企業も積極的にこれらの問題解決に取り組むことが求められている。アステラス製薬は、60%以上の社員が国外で勤務し、世界でも有数の事業展開を実現している。国際的なネットワークを広げ、信頼関係を築くためには、コミュニケーションと情報共有が不可欠である。畑中社長は講演を通して、変化に敏感になることに加え、'次世代への責任'を考え、先を見据えた決断することの重要性について強調した。変化に敏感になるということは、トレンドに飛びつくということではない。本当に価値があるものを見分け、時には強固な姿勢を取ることも必要となる。目先の利益だけでなく、未来を見据える決断をすることは、組織を率いるうえで決して簡単なことではないだろう。リーダーとは、自ら常に成長する努力を惜しまない。畑中社長の温厚で謙虚な態度は、我々リーディングプログラム受講生にリーダーのあるべき姿を示すだけでなく、研究活動や今後のキャリアに向けて背中を押してくれるような頼もしさが感じられた。


レクチャー2(帝人株式会社 鈴木純代表取締役社長 CEO)
講演テーマ: 我々はどのように新しい事業を創ってきたか?            
報告者:山口 絢加(+張 春明)

ビジネスの根本を成すのはC (Cost), P (Price), V (value)である。帝人と消費者の信頼関係は帝人が V(value)>P(Price)の商品を提供し続けることから生まれる。この概念を踏まえて、帝人では、お客様が必要とする価格よりも高度な価値を創造することを目指している。そのためにinnovationが必要となる。帝人では、材料分野、ヘルスケア分野、IT分野の3分野の中から、2分野を結びつけ融合する事で、新たな価値、新たな商品を生み出している。現在では、ヘルスケア分野における異分野融合によるinnovationに特に力を入れており、その例としては、sleep care serviceという睡眠の質を改善するサービスを開発している。鈴木氏の講演を聞いて異分野融合への理解を更に深め、異分野研究を行うヒントを得る事ができた。
また、社長から、「自分が本当にしたいことをすること」、「意味の無いことは、この世にはない」というメッセージを送って下さった。私も、今後研究を行う上で研究に行き詰まり悩むことが度々生じると思うが、その時はこれらの言葉を思い出して、粘り強く研究を進めていきたいと強く感じた。


レクチャー3(国立極地研究所 門倉昭宇空圏研究グループリーダー)
講演テーマ: :南極地域観測隊の活動とリーダーシップ           
報告者:森 風美加

第57次隊長を務められ、4度の南極赴任歴のある門倉昭氏から、南極地域観測隊の活動とリーダーシップについて貴重なお話を聞くことができた。南極は各国の基地があるため"国境のない大陸"と表現され、部隊の構成員は民間企業から小学校の教諭まで多種多様なので、現実社会が凝縮したような不思議な環境だと再認識した。南極という過酷な環境で国籍・文化を越えて団結し観測を成功させるために、赴任前にサバイバル訓練や打ち合わせを重ねて準備をするという過程のお話が興味深かった。「観測隊におけるリーダーシップはfrontmanとconductability」というお話には大変刺激を受けた。

3. ワークショップレポート 

テーマ:自由
ルール:「ゴールデンサークル」"Why"-"How"-"What"
報告者: Lohani Sweksha

継続的に新たな発想を社会に発信することは将来イノベーションを起こせるリーダーとなるためには欠かせない。しかし、新たな発想は、そう簡単に思いつくものではない。一体どのように考えることが新たな発想をうみだすことにつながるのか以前より疑問に感じていた。今回の学生会議のワークショップのテーマでもある"Funnovation"を考えることを通して、新たな発想を得るための「プロセス」を実感することができた。それは、世界的に有名なリーダーとそうでない人との違いでもある。
"Why"-"How"-"What"の順で考えるという「ゴールデンサークル」のルールは、今回のワークショップにおいて限られた単語の中から新たな発想をうみだす上で非常に重要である。このことは、一度議論が行き詰ってしまった時、強く実感した。ふと振り返ると、どんな結果にしたいかという"What"の部分をグループメンバー全員が考えていることに気がついたのである。その後、全員で相談し、視点を変えてもう一度別の方向から考えることそして結果を考えずに構想を膨らませ、"Funnovation"なものを考えたいからという"Why"の部分を先に考えたことで以前は、思いつきもしないようなアイデアが最終的には出た。このことは,普段の研究活動でも大いに役に立つのではないかと思った。特に研究で行き詰った時、固定概念を持たず、結果を先に考えないことで新たな発想につなげていきたいと思った。 


報告者:三浦拓也

イノベーションを起こすという行為は、大学で行う研究だけでなく、企業での企画としても日々求められているものである。しかし、イノベーションを起こすことはとてもチャレンジングな行為であり、他の人と同じ考え方では達成することができない。
そこで、今回のワークショップは通常とは異なる特殊な視点、Funnyなアイデアから出発するInnovation、そこから生まれた造語であるFunnovationを起こすことをテーマに挙げて企画された。
具体的に行った活動としては、用意された言葉の中のいくつかをランダムに発見し、そのうちの2つからFunnyな組み合わせを提案し、それを足掛かりとして肉付けすることで、Innovativeなアイデアまで発展させるというものであった。我々のグループでは単語の集合から偶然発見したspider, danceという単語から、spiderのようにdanceする(図を参照)という行動は実にFunnyであるのではないかと考え、この組み合わせを足掛かりとして採用した。ここから何か実世界に役立つinnovativeなアイデアを考えたところ、今回農業経済を専門とするメンバーの提案により、このspider danceを農薬フリーな農業、および農作物の消費を促進する広告として用いることで、印象的な広告を作り上げようという着想に至った。
私はこの活動から、広告をはじめとする広報活動にインパクトを与えるためにはFunnyさが大きく貢献するということを学んだ。研究発表のプレゼンを見ても、いくつかの素晴らしいプレゼンでは最初のつかみでFunnyなスライドや冗談を用いて場の空気を暖めることを行っていたし、また当研究室の統合型顕微鏡「オーサカベン」は論文投稿後、その機能に加えてFunnyな名前も手伝ってか、新聞やWebの情報サイトなど様々なメディアで取り上げられ、広告としても成功を収めている。今後は一人の大阪人として、恥じないよう、しっかりとした内容のスパイスとしてFunnyさや遊び心を発表や命名、研究方法に取り入れ、インパクトある研究・発表ができるようにしていきたいと思っている。

Spider danceの様子

報告者:大島卓弥

今回の学生会議では、2日目にWorkshopが行なわれました。Workshopのテーマは「OPERATION PUMPKIN KING -HIJACK Forbes JAPAN!!-」であり、世界的経済誌「Forbes」の日本版「Forbes JAPAN」の記事を差し替えるほどの面白く、かつ革新的な、まさに世界を変える「"Funnovation" = Funny + Innovation」なアイデアを創出するということを目的としたものでした。
300人ほどの参加者が32のグループに分かれ、それぞれ何がFunnovationになるのかを真剣に考え、Brainstormingを通じて熱い議論を交わし、創り上げたアイデアを共有し合いました。
またWorkshopを始めるにあたり、Forbes JAPANの発行人兼編集長である藤原昭広さんからご講演をしていただきました。自身の編集長としての経験を基にして発見したInnovationを起こす人、リーダーとして活躍する人の共通点について、わかりやすい例えを用いながら紹介していただくとともに、未来の担い手である私たち参加者に対して熱いメッセージを贈っていただきました。
このWorkshopを通じて私は、革新とは何か、また革新を起こすために何が必要なのかを改めて自分の中に落とすことができました。講演の中で紹介していただいた、パナソニック創始者である松下幸之助の「成功するところまで続ければ、それは成功になる」という言葉、確かにそうだが続けるのが困難である。成功するまで続けるためには、自分の本当にやりたいことをやること、その革新を「なぜ」起こすのかという部分を強く信念として持ち続けることが重要ということに気づくことができました。
これからの研究や普段の生活においても、立ち止まりそうになった時はHow、Whatではなく、Why、なぜそれをするのかを考えることで、改めて意欲が生まれ、物事を続けるエネルギーとなる、このことは常に忘れずに自分の中に刻み込みたいと思いました。

報告者:松村 憲佑

[ 内容 ]
各グループの構成

  • 実行委員会1 名:各グループの司会進行
  • 学生5名

Fun/Funny なアイディアからInnovationを創出する"Funnovation"を創出するworkshop。

Phase1
ランダムにアルファベットが配置された紙が与えられ、クロスワードパズルと同様のルールに従って、英単語を見つけ出す。見つけ出した英単語の中から、いくつかの英単語を組み合わせて、Fun/Funnyなアイディアを創出する。

[グループ32の場合]
探し出した英単語:Train, Rain, Chameleon, Coral, Dance
創出したアイディア

  • Train×Rain×Chameleon:カメレオンの舌のように水を集め、貯水することができる電車
  • Train×Chameleon:カメレオンのように色が変わる電車
  • Train×Chameleon:トレーニングによってダンスをするなど、ペット化したカメレオン
  • Chameleon×Coral:サンゴ礁をカメレオンが泳ぐことができるような装置によって、新たな観光スポットを作る
  • Chameleon:カメレオンのように色が変わるTシャツ

Phase2
社会のニーズやアイディアの必要性を考慮した上で、Phase1 で創出したアイディアの中から1つのアイディアを選択し、"Funnovation" に昇華させる。具体的には、なぜそのアイディアが必要か、どのようにそのアイディアを成功に導くか、そのアイディアのターゲットは誰かを考える。

[グループ32の場合]
"Train×Rain×Chameleon:カメレオンの舌のように水を集め、貯水することができる電車"をFunnovationに昇華させた。

社会的ニーズ:海や川のある地域で貯水し、水不足の発展途上国に水を運送することができ、水不足の改善に貢献することができる
ターゲット:水不足な発展途上国
成功に導く方法:JRなどの鉄道会社、政府、アカデミア、ボランティアなどの連携を行う

Phase3
Phase2で創出した"Funnovation"の特集記事を作成する。

  • Funnovationのtitle
  • Funnovationを一目で伝える絵
  • Funnovationの必要性や、ターゲット、成功に導く方法についての文章

[グループ32の場合]
title:Chameleon (Change My Life)


Wrap Up
全てのグループの作成記事の共有と評価を行う。
work shopの内容に対してフィードバックがなく、他の学生の記事を見て回るだけだったので、自分たちの記事の客観的な評価を得ることができなかった。これについては、教員やメンターからフィードバックがもらえるように、改善するべきと感じた。

[ 学ぶことができたこと ]
今回、Phase2において、どのアイディアをFunnovationに昇華させるかについての議論が長くなった。内容のある議論ではなく、どれが面白く、社会ニーズに合っているか考えるだけの議論であり、進展しなかった。原因としては、何をFunnovationにするか、物にこだわり過ぎたことが考えられる。innovationにおいて重要な考え方として、以下のようなゴールデンサークルがある。

最も重要で根幹にあるは、"Why"、なぜそのinnovationが必要なのか、第3者に自信をもって伝えることができる情熱があるかである。次に重要なのは"How"、どのようにしてそれを成功させるか、である。表面にあるのが、"What"、何を作るかである。私たちのグループでは、Phase2において無意識に"What"について議論を交わしていたために、議論が深まらず、どのアイディアが本当にFunnovationになり得るのかを考えることができなかった。今後、新たな物事を考えるあらゆる場面において、このゴールデンサークルの考え方が重要となるため、忘れずに心にとどめておきたい。

4. 成果&展望

  1. IPBS履修生8名が、充実した3日間を過ごしてきました。
  2. 積極的に講演とワークショップに参加し、白熱したディスカッションを行いました。
  3. ワークショップや懇親会を通じて、全国のリーディングプログラム履修生と交流ができ、新たなネットワークを築くことができました。
  4. 大阪大学(未来戦略機構)が次回の全国リーディングプログラム学生会議主催の候補となりました。
  5. 参加前は、1名のリーダーのもと参加準備を進めたが、会議参加後は参加者8名全員がリーダーになったと思います。

今回の学生会議を機に築くことができた産・官・学にわたる新たなネットワークを活かし、共同研究や新たなイノベーションを起こしていきたいと思います。また、大阪大学(未来戦略機構)が主催となり、次回の全国リーディングプログラム学生会議を開催できること願ってやみません。

5. 図解

日程:平成28年7月8日(金)~7月10日(日)
場所:幕張メッセ・国際会議場

7月8日(金):一日目

畑中義彦代表取締役社長(アステラス製薬株式会社)による講演(テーマ:次世代への責任と思い)の様子


講演後の懇親会の様子

7月9日(土):二日目

鈴木純代表取締役社長による講演(講演テーマ:我々はどのように新しい事業を創ってきたか?)の様子

7月10日(日):三日目

門倉昭チームリーダー(大学共同利用機関法人 国立極地研究所 宇空圏研究グループ)による講演(テーマ:南極地域観測隊の活動とリーダーシップについて)の様子

7月9日(土)~10日(日):二・三日目

学生が"Why"-"How"-"What"の順で考えるという「ゴールデンサークル」のルールに従って、『Funnovation』と銘打ち、ワークショップが行われ、活発な討論が繰り広げられました。

ワークショップの様子-その1

ワークショップの様子-その2 部分作品

第四回全国博士課程教育リーディングプログラム参加者集合写真

生体統御ネットワーク医学教育プログラムの履修生8名
(参加者:前列左から松村憲佑、三浦拓也、大島卓弥、後列左からLohani Sweksha、山口絢加、張春明、濱川菜桜、森風美加)

筆者:生体統御ネットワーク医学教育プログラム5期生 張春明