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第5回全国博士課程教育リーディングプログラム学生会議参加報告

 Post-event Reports
2017.8.3  

IPBS履修学生5名(4期編入生1名、6期生4名)が、長野県上田市にある信州大学で行われた第5回全国博士課程教育リーディングプログラム学生会議に参加致しました。

日時:2017年7月8日(土)-9日(日)
場所:信州大学上田キャンパス
WEBサイト:https://leadingstudent2017.wixsite.com/leadingmeeting5th-jp

5回目となる今回の学生会議は、信州大学の「ファイバールネッサンスを先導するグローバルリーダーの養成」プログラムの学生が主催しており、"Understanding People"をコンセプトに、今後の大学・社会で直面しうる問題を例として、様々な背景を持つ学生間の意見交換を通じ、将来的にリーダーとして活躍するために必要なディベート力の向上を目指した会議となりました。

会議は全日程、公用語として英語を使用し、参加した学生たちは2日間に及ぶ白熱した討論を行いました。

学生からの報告は以下の通りです。

特別講演1『「個」を生かす組織づくり』
講演者:福富信也氏(株式会社Humanergy 代表取締役)
報告者:大浦聖也

メンバーを規則で雁字搦めにはしたくないが、「個」を認めすぎるとまとまりがなくなる。リーダーが共通して持つこのようなジレンマをどのように解消するかというご講演でした。

福富さんが、最も強調されていたのは、行動指針(value)の重要性です。判断・行動に働きかけてしまうと、メンバーは指示待ちになってしまいます。一方、基準を示し、メンバーの自由な判断を認めることで、各々自身で考え行動できるようになり、リーダーは詳細な行動をいちいち指示する必要がなくなります。

具体例として、ディズニーランドのキャストは、落ちているアイスクリームを立ったまま足で拭くことを挙げられていました。オリエンタルランドは行動指針を優先度が高いものから順に、①safety②courtesy③show④efficiency と定めています。立ったまま拭くという行動は、決して礼儀正しいものではありません。しかし、それは安全性を最優先した結果であり、リーダーの望む行動であったと言えます。アイスクリームの拭き方までいちいち指示することは現実的ではありませんし、そのような細かいことまでマニュアルにされればメンバーの意欲が削がれることは避けられないでしょう。

基準がなければ、個々人は各々の価値観や経験で行動を選んでしまいます。それが偶然リーダーの求めるものになることなど奇跡といっても過言ではありません(五芒星をどの書き順で書くかという簡単なタスクでさえ、一致することは稀です)。行動指針を示すことは、メンバーの自主性を認めつつ、チームワークを形成できるという点で最も優れたものの一つだと感じました。

star.png五芒星:人によって書きやすい経路が全く異なる

特別講演2『移動する人々と多様性』
講演者:佐藤美央氏(IOM東京事務所駐日事務所代表)
報告者:松村憲佑

国際移住期間駐日代表の佐藤未央さんによる国際移住期間(IOM)の紹介と移住の問題点に関するご講演でした。私は日本人であるため、本講演内容に馴染みが無く、理解するのに苦労しました。留学生は日本人学生よりも講演の中で例示された問題を実感し、考える場面が多く、活発に議論しており、文化の違いを実感しました。また、国際的に活躍することのできるリーダーになるためには、自分の専門分野の知識だけでなく、異文化の人々が直面する問題についても知っておかなくてはならないと感じました。

移住は出て行かれる側も受け入れる側も問題を抱えているケースが多い印象がありました。例えば住民権の獲得のしやすさや、職につけるかなどの問題があります。このような問題点に目を向けられることが多い移住ですが、移住によって多種多様な人が様々な国に移動し、分化が混ざり合うことで更なる発展を見込めるという話は印象に残りました。多種多様な文化や考え方の人々が入ってくることで、その国の人だけでは思いつかないアイディアを出すことが出来るというわけです。

ワークショップ

今回の学生会議では、「Understanding People」と題して「理解し合う事」をテーマに、「価値観の根底にある背景を理解し合う事」に重点を置き、以下の7つの議題について、活発な討論が行われました。

1. 日本社会で働く外国人について
  副題a:現実と期待のギャップ b:上司と部下との間での情報共有の問題
2. 階層型企業と日階層型企業の比較について
3. 日本の過重労働を改善するために必要なこと
  副題:低出生率と労働条件との関係
4. 学生生活における勉強と私生活のバランス
5. 大学ランキングの信頼性
6. 教育体制をよりよくするために必要な要素
  副題a:成績を重要視しない教育システム b:対話型教育における長所と短所
7. どの様なリーダーシップが必要か?

ワークショップは、参加学生を21グループに分け、3グループに同一のトピックを振り分け、各グループ6人+ファシリテーター1名の計7名でディスカッションを行いました。

学生たちはこのワークショップを通して、「自身の価値観・考え方を問いなおし」、「議題に含まれる社会的な問題を明らかにし」、「現実性がありグループ内の全員が同意できるような解決策を見つける」ことを経験しました。

以下、学生からのワークショップの報告は以下の通りとなります。

報告者/松村憲佑
「階層型企業と日階層型企業の比較について」

6人の学生でグループが構成され、各グループに司会進行役として信州大学の学生が1人つきました。1日目は各グループに与えられたテーマについて議論し、ポスターを作製しました。2日目は他のグループと議論し、投票によってポスターの順位を決めるというものでした。

私のチームは日本人3人、台湾人1人、インド人1人、フィリピン人1人、およびインドネシア人の司会進行役と非常に多種多様な学生によって構成されていました。私たちのテーマは「階層型企業と非階層型企業の比較」でした。階層型企業は大手メーカーなどの大企業、非階層型企業はベンチャー企業として比較をしました。それぞれ以下の利点と欠点を考えました。

● 階層型企業(大手メーカー)
 利点
  ・ある程度安定した収入や年功序列による昇格
  ・ネームバリューがあるため、商品を売り出す際には有利になり得る
  ・プロジェクトが効率的に進みやすい
 欠点 
  ・自分のアイディアが会社全体に反映されにくいこと
  ・CEOなどの会社上層部と社員の間に距離がある
  ・会社の歯車として働くと感じた場合はやりがいがなくなってしまうのではないかという不安がある

●非階層型企業(ベンチャー企業)
 利点
  ・取締役との距離が近く、Innovativeなアイディアを実行に移しやすい
  ・仕事内容と社会の距離が近く、やりがいを感じやすい
 欠点
  ・経営的なリスクがある・収入に不安がある
  ・個人の労働量が多く、QOLが低下する可能性がある

[ 問題点] 収入とやりがいまたはやりたいことの両立が難しく、どちらかを多少切り捨てなければならない現状がある。この問題については多くの学生が同じ悩みを抱いていた。

[ 解決策] 階層型企業の中に非階層型のチームを部門ごとに作る。つまり階層型企業と非階層型企業の性質を組み合わせて、互いの利点を活かす形態のシステムを作る。

多種多様な学生とのディスカッションは非常に良い経験になりました。異なるバックグラウンドを持った人とディスカッションする際は、絵を使用するべきという研究者としての経験が活き、私自身積極的に議論に参加することができました。また、今回の会社の運営システムについての議論は将来リーダーを目指す上で必ず活きると思います。

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報告者/SU RU
「階層型企業と日階層型企業の比較について」

6人の学生が一つでグループになり、各グループが違うテーマについてディスカッションをしてから、ポスターを作成し、発表しました。
私たちのテーマは「階層型企業と非階層型企業の比較」でした。階層型企業と非階層型企業の特徴を比較し、それぞれの利点と欠点を考え、問題点と解決方法を探りました。

階層型企業

非階層型企業

規模

大企業

中小企業、ベンチャー企業

上司との関係

距離感がある

良い

プレッシャー

多い

少ない

意見交換

意見を言う相手は明確であるが、意見を言いだしにくい

意見を言いやすいが、言う相手が明確ではない

将来像

企業が決める

誰でも自分のビジョンを持っている

クリエイティビティ

低い

高い

問題点:階層型と非階層型はほとんど企業の規模により決められている。確かに、企業の規模が大きくなると、元々、非階層型であっても自然と階層型になる。そうでないと、管理しにくく、効率も悪くなる。しかし、階層型企業では、リーダーとメンバーとのコミュニケーションが少ない、メンバーは自分の将来ビジョンを持っていない、リーダーだけが重大な判断する、などの理由により、企業のクリエイティビティが低い、社員のプレッシャーが大きいなどの問題点が生じる。中小企業ではそういった問題はないが、企業の発展に伴い、階層型企業へと構造が変化すると同様の問題が生じる。
解決方法:階層型と非階層型を結びつけ、フラットな階層型にすることで解決することができる。例えば、会社の各部門内では、非階層的な関係を築き、また、各部門長の結びつきも非階層的な関係にすることによって、コミュニケーションを密にした、より創造性のある企業になるだろう。とはいえ、この方法も完璧ではない。フラットな階層型企業はやはり効率が悪くなりがちである。そこは、バランスを取ることが必要であろう。

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報告者/河瀬直之
「大学ランキングの信頼性」

今回の学生会議のテーマである「Understanding People」に基づいて用意されたいくつかのテーマに対して、班ごとに話し合い、ポスタープレゼンテーションを行いました。私の班(3班)のテーマは「Reliability of University Rankings」で、現代社会における大学ランキングの役割と問題点について信頼性という観点から議論しました。私の班の班員は、日本人、タイ人、トルコ人、ネパール人、東大、阪大、名大、広大、信州大、富山大という多様なバックグラウンドを持った人たちで構成されていた為、各々の大学のランキングと大学での現状から様々な意見や問題が議題に上がりました。

 特に大きな問題点として上がったのが、大学ランキングや評判に固執して、実際にやりたいことを考えずに大学を選んでいる人が多いという点です。班員のうち日本人の学生は、全員ランキングを重視して大学を選んでいたのに対して、留学生の三人はそれぞれ目標や目的を持って大学を選んでいました。印象的だったのはPinar Temocinさんのコメントで、「私は平和学習をする上では広島が一番良い場所だと感じているから。」と強い意志を持って自身の大学を選んだことを話してくれました。また彼女は、それぞれの大学ごとにそれぞれの良さがある、それに対してランキングだけを重視して大学を選んでいるのはおかしいとも話していました。

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このランキングが過度に信用されている《現状》に対しての《原因》について、私たちは大学ランキングとおおよそ直結する2つの点、「大学予算」と「就職活動」に注目して考えました。

まず1点目の大学予算について、大学の予算は大学ランキングの順位に近い順に額も大きく、偏りという観点で見ても、例えば大学運営交付金では受給額上位10校の合計額が全体の42%を占めるほどになっています。また東京大学保田侑亮さんの「行きたい学会、買いたい試薬などは大抵要求が通る」というコメントには大学予算の格差を感じました。

 次に2点目の就職活動との関わりについて。具体的な数字などはありませんが、各自の大学の周囲の話からやはり上位の大学ほど就職活動では有利でエントリーシートが通りやすい、インターンの斡旋やサポートが充実しているなどの差があるように感じられました。これらの点から確かに大学ランキングに基づいて選ぶことにはある程度メリットがあるように感じられます。しかし根本にあるべき学問が疎かにされており大学教育を果たす場所として然るべき選ばれ方ではありません。

 そこでこれらのランキングが過度に重視されている現状に対して私たちの班は1つの解決策を提案しました。それは、

「分野ごと、特色ごとに信頼できる小さいランキングを作る。」

というものです。例えば学部ごと、専門分野ごとに格付けされたランキングを作ります。これができれば、学生はそれぞれの興味に基づいて適した大学を探せるようになりますし、大学もそれぞれの強みを正確に周知できるようになります。またこの解決策の良い点は、就職活動の際にも企業がこのランキングに基づいて欲しい人材を探せるようになるという点です。より適した学生と企業のマッチングによってインターンシップ制度やリクルート活動の改善などにもつながります。

 以上の内容をまとめて2日目にポスターセッションを行いました。

英語で解説することや、議論を深めることの難しさを改めて感じましたが、今までの授業での成果を実感する機会にもなりました。残念ながらグループ賞を獲得することはできませんでしたが、投票で期待していた以上に票が集まり内容的にも成果的にも充実した時間となりました。

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報告者/大浦聖矢
「教育体制をよりよくするために必要な要素」

自分と全く異なる背景・価値観を持つ人々と向き合うには、「理解しあうこと」が不可欠です。このworkshopは、多様なメンバーで議論することを通じて、理解しあう過程を経験することがコンセプトとなっています。

参加学生は6-8名程度のグループに分けられ、それぞれテーマが与えられます。私たちのグループのテーマは「教育体制をより良くするために必要な要素」でした。

①まず、与えられたテーマについて、なにが問題で、それらをどのように解決していくかを話し合います。同じテーマを与えられても、制度を重視する人、学生の動機付けを重視する人、教師の質を重視する人と、各々重きを置く点がことなり、大変興味深い討論となりました。

②次に、グループ内で意見をまとめあげ、ポスターを作成します。どのようにまとめるか、このworkshop一番の佳境です。当初、私を含めた幾人かは、最重要の問題に焦点を当てて掘り下げるべきだと主張していました。しかし、各々大事だと思うことが異なり、優先順位をつけることは叶いませんでした。最終的に、すべての問題点を列挙し、それに対する解決策の概略をつけることで、ポスターにまとめました。多様な意見が出ること自体はいいことだと思いますが、その分、まとめあげるのにひと苦労です。③最後に、作製したポスターを使用しながら、他のグループの人と議論します。上手く伝えきれなかったり、痛い所を突かれたりと、やや苦い思いはしましたが、意見を交換し合うよい経験となりました。

このworkshopを通じて、互いに理解しあうことがどれほど大切であるか身をもって体験し、同時に、異なる価値観を持つ人々と向き合うということは、決して感覚ではなく、確固たる知識・技術が必要であることを強く感じました。今回の学生会議での体験を生かし、積極的に異なる価値観に向き合っていこうと思います。

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報告者/日置仰
「教育体制をよりよくするために必要な要素」

~Understanding People~

このWorkshopでは、価値観の根底にある背景を理解し合うことに重点を置いて、いくつかのトピックスについて議論・発表が行われた。

私は、このWorkshopを通して、問題を解決するためには、当事者のことを理解する必要があるということを学んだ。このことは、ごく当然のことであるが極めて重要である。私たちのグループは、「教育体制をより良くするために必要な要素」についてディスカッションを行った。その中で、現在の教育システムの問題点として、全員が同じことを、同じペースで、同じように学び、同じ土俵で評価されている事が挙げられた。この事が原因で、世間でも言われているように、モチベーションや好奇心の低下、学力の低下などの問題が起こっている。そして、この問題を解決していくためには、個々の学生のニーズや興味を考えることが必要であるという結論に至った。そうするために、今までの先生からの一方通行な教育方法を改善することや、学生が自分の興味を見つける時間を増やすことなどの改善が必要である。より具体的な解決策は、今回のWorkshop中には、議論することはできなかったが、今回の議論の中で、人を理解することが問題を根本から解決していくためには、必要不可欠であることを学ぶことができた。

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開幕の挨拶。(右)実行委員長野Dennis Burgerさん。(左)副実行委員長の黒澤真美さん。

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Workshop時の様子

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懇親会にて